時間は進んで、三時間目。
私の眠気はピークに達していた。
――このままでは、…まずい…。
一時間目、二時間目と、何とかなったから…この調子で昼まで持つと高をくくっていたのだけれど。
どうやら、現実はそう甘くはないらしい。
三時間目は古典だったのだが、宇練先生の声が、丁度良い感じに、子守歌に…
こくり、こくり。
現実と夢の狭間に、私はいた。
こくり、こくり。
一定のリズムを刻みつつも、睡魔は確実に忍び寄って来ているらしく、不意に自分の頭ががくんと大きくノートの方へ落ちた。危ない、机とこんにちはするところだった。
そのとき、後ろから肩のあたりをちょいちょいとつつかれた。
何だろう、と思って見れば、白鷺くんが可笑しそうに口元を緩めて私を見ていた。
「かのいなて寝?」
「…うん、眠い…」
彼の言っている言葉はよくわからなかったけれど、言っている意味は何となくわかったので、私はそう返した。
「っくっくっく…ろだんたて見もでマラドたてし画録、らかだとこの前おせうど?」
含み笑いを添えて、白鷺くんはそう言う。
彼の言葉がわからないということもあったけれど、何より眠たかったので、私は目を半分閉じながら適当に頷いておく。そんな私を見て、白鷺くんはより可笑しそうに笑った。
そのとき、ふっと、宇練先生の姿が目に入った。
ぼやけていた私の視界だけれど、宇練先生の視線は確実にこちらに向いていた。
ひゅんっ。
私の右頬を、何か物体が掠める。
次いで、がたん、と背後の椅子が倒れる音。飛んでったチョークが白鷺くんに当たったのだ、ということを理解するのに、そう時間は掛からなかった。
眠気が完全にぶっ飛んだ。
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