「…出てきなさいよ」
砂漠だった。
他の者は、じりじりと焦がすような暑さや足元の悪さに苦戦を強いられているのが、彼女だけは違った。


「そこにいるんでしょう」
腕を組み、でんと構えて、ある一点に向かって喋り続ける。


「私の背後から出て来ようったって、それはもう無理な話よ。3年前のようにはいかないわ。さぁ、出てらっしゃい」
そんなことをしている以前に、此処は今、間違いなく戦場である。
勿論敵は、そんな隙だらけ(に、見える)彼女を背後から襲おうとするのだが、それは全て彼女の持つ刀に、後ろ手ながらにいなされた。


――3年前のようにはいかない、というのは、このことか。
それを少し離れたところから見ていた、緑髪の男は思った。
もし自分が、このまま彼女の背後から現れようものなら、彼女は間違いなくあの刀で自分を一閃するつもりなのだ。腕は間違いなく上がっている。それは避けたい。


――しかし、
彼女は何故、先程から砂に向かってばかり話しかけているのか。




それは、は3年前背後を取られたときから、ソーンバルケが砂の中に隠れていると踏んでいたことによる。




誰に尋ねておいでですか
(さっ…さそり、よ)(彼女は耳まで真っ赤にしながら、そう言った)

09.03.08(ソーンは砂から出てくると思ってます)